2011年 11月 19日
超短編小説:13 |
『暗黒のトンネル』
老人がヨロヨロと歩いて来る。
地下鉄の中である。
垢染みた上着。
手には破れかかったビニール袋。
べチャリ。
唐突に、顔から倒れこむ老人。
若者が座っている。
その足がほんの僅かに飛び出ていた。
チッ。
舌打ちの音。
若者は、老人よりも自分の靴を気にしている。
冷ややかな空気が辺りを支配している。
付近の乗客は老人と若者を見比べ、そして目を逸らした。
老人は、動かない。
顔は床に突っ伏したまま。
裾の破れたズボンを、蛍光灯が青白く照らしている。
やがて、顔の下から涎と血の混ざり合った液体がドロリと流れ出る。
地下鉄は走っている。
真っ暗なトンネルの中を轟音をたてて走り続けている。
前も、後ろも、どこまで行っても闇である。
老人がヨロヨロと歩いて来る。
地下鉄の中である。
垢染みた上着。
手には破れかかったビニール袋。
べチャリ。
唐突に、顔から倒れこむ老人。
若者が座っている。
その足がほんの僅かに飛び出ていた。
チッ。
舌打ちの音。
若者は、老人よりも自分の靴を気にしている。
冷ややかな空気が辺りを支配している。
付近の乗客は老人と若者を見比べ、そして目を逸らした。
老人は、動かない。
顔は床に突っ伏したまま。
裾の破れたズボンを、蛍光灯が青白く照らしている。
やがて、顔の下から涎と血の混ざり合った液体がドロリと流れ出る。
地下鉄は走っている。
真っ暗なトンネルの中を轟音をたてて走り続けている。
前も、後ろも、どこまで行っても闇である。
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by kumoganagareteiku
| 2011-11-19 19:00
| 超短編小説